特許出願・申請の審査にかかる期間
特許出願・申請をした後、特許庁に審査を請求してからどのくらいの期間待てば最初の審査結果を知ることができるのか、最終的な審査結果がわかるまでのどのくらいの期間がかかるのか、早期審査制度を利用するとどのくらい審査期間が短縮されるのかについて説明します。
特許申請・出願の審査にかかる期間はどのくらい?
特許申請・出願の審査にかかる期間について、特許行政年次報告書2023年版 第1部 グラフで見る主要な統計情報 第1章 国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状(特許庁)(PDF3.69MB)、特許庁ステータスレポート2023 第2部 2022年の施策成果 第1章 審査・審判(PDF2.91MB)などを参考にして説明します。
特許申請の審査待ち期間、最終処分までの期間
です。前年度の平均10.1か月より0.1か月だけ短くなりました。
ここでいう「審査待ち期間」(一次審査通知までの期間)というのは、特許申請手続をしてからの待ち期間ではなく、
発明の具体的な内容などについて特許庁の審査官に審査してもらうためには、特許申請手続を行っただけではだめで、申請の日から3年以内に出願審査請求という手続を行う必要があります。
したがって、特許申請手続をしてからの待ち期間は、「特許申請手続をしてから審査請求手続するまでの期間」+「審査待ち期間」になります。例えば、特許申請の日から3年経った期限ぎりぎりの日に審査請求手続をしたとすると、単純に平均の「審査待ち期間」を足した場合には3年と10.0か月になります。
なお、この「平均の審査待ち期間」は、後で述べる審査を早くしてもらう早期審査などを申請した出願が含まれた平均の審査待ち期間です。
早期審査などを申請しない場合の「平均の審査待ち期間」は、特許庁に問い合わせたところ公表していないということでしたが、全体の審査件数、早期審査の申請件数や平均審査待ち期間などから推測すると、プラス1か月程度ではないでしょうか。
です。前年度の平均15.2か月より0.5か月短くなりました。
ここでいう「最終処分までの期間」(標準審査期間)というのは、
一発で特許査定の場合には、「審査待ち期間」と「最終処分までの期間」が同じになります。
なお、特許出願してから審査請求手続を経て最終処分を受けるまでの流れについては特許出願・特許申請の流れのページをご参照ください。
特許庁は、2023年度までに「審査待ち期間」について平均10か月以内にすること、「最終処分までの期間」を平均14か月以内にすることを目指しています。
「審査待ち期間」については、平均10か月以内の目標を達成していますので、これを2023年度末まで維持できればいいですが、「最終処分までの期間」については、審査をもう少し早める必要があります。
審査で調査対象になる中国語などの外国語特許文献が増加していること、請求項数が増加していること、技術が高度化・融合化した例えばAIコア・関連発明の出願が増加していることなどが、審査の負担を増大させているようです。
なお、上述の特許庁のリンク先の資料では「最終処分までの期間」を「権利化までの期間」と表現していますが、拒絶査定までの期間も含まれることや、特許査定になっても正確にはまだ権利化はされていないことなどからそのような表現は差し控えました。
もっとつきつめると出願の取下げ、放棄までの期間も含まれるので「最終処分までの期間」という表現も完全には正確じゃないです。
少し古いデータを付け足して「審査待ち期間」と「最終処分までの期間」の平均期間の推移をグラフに表してみると、審査期間が短縮されてきていることがよくわかります。
特許権の存続期間は、原則、最長で(特許料を支払い続ければ)特許出願の日から20年で終わります。このように特許権は権利が発生した日ではなく特許出願日を基準にして最長の存続期間が決められているので、特許出願した日から特許権を取得するまでの期間が短ければ短いほど長い存続期間の実現が可能になります。
なお、審査が長引き、特許出願の日から5年を経過した日、または、審査請求の日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後に特許権が設定登録された場合には、特許権の存続期間の延長が可能になり、出願日から20年を経過しても特許権を存続させることが可能になりました。
日本では世界最速の審査を目指すとのことですが、例えば、米国では2022年度における出願から最初の審査通知までの平均期間(審査請求の制度は採用されていないので。)が18.5か月、出願日から最終処分までの平均期間が25.2か月、欧州特許庁では2022年における出願日からサーチレポートを送るまでの平均期間が4.9か月、審査請求日から出願人に審査官の特許付与の意図を通知をするまでの平均期間が24.3か月、中国では2022年における平均審査期間が16.5か月、韓国では2022年における審査請求日から最初の審査通知までの平均期間が14.4か月(実用新案登録出願を含みます。)、審査請求日から最終処分までの平均期間が18.4か月です。
それぞれの国で平均審査期間の定義が異なるので、単純に比較はできません。
日本の特許庁は、審査を行う上で重要な先行技術文献調査について民間の調査会社などを活用したり、496名の任期付審査官(5年間の任期で採用)を確保することなどで、特許出願の審査の迅速化にがんばっているそうです。
ちなみに日本の特許の審査官の数(2022年度)は1,662名(前年度から-3名)でした。日本の審査官の数は少しずつですが減ってきているとのことです。
日本の一審査官当たりの審査処理件数は、米国特許商標庁や、欧州特許庁と比べると数倍多く、他の国々と比べると特許申請の審査が効率的に行われているといえるのかもしれません。
特許出願の審査が早くなり、早期権利化が望まれることのほうが多いと思われますが、発明の内容によっては逆に審査を遅らせたくなる場合も考えられます。
例えば、競合する会社の技術開発の方向性をもう少し時間をかけて見極めてから権利化を進めたい場合や、基礎研究に関する発明であるために具体的な実施の目途が付くまでに時間がかかる場合などが挙げられると思います。
このような場合に出願人の申請により審査を遅らせる制度を採用している国もありますが、日本では採用されておりません。
日本における特許申請の平均審査待ち期間などのまとめです。
早期審査の審査待ち期間
上述したように、特許申請の審査待ち期間は短縮化される流れになっているとはいえ、中小企業などの特許出願人の場合には早く特許権を取得しないと権利を有効に活用できなくなるという事態が生じかねません。
通常よりも早く特許申請の審査を行ってもらって、早期権利化を実現する制度として
という制度があります。早期審査が認められるためには、所定の要件を満たす必要がありますが、
事情説明書には、先行技術の開示及び対比説明の記載が求められますが、中小企業等の特許出願人の場合には、特許出願書類である明細書に先行技術文献と対比説明が適切に記載されていれば、簡単に省略して記載することが可能です。
また、早期審査のために特許庁に特別に手数料を支払う必要はありません。ただし、特許事務所に早期審査の申請を依頼した場合には、特許事務所の手数料はかかる場合が多いと思います。このことは個人で行う特許申請・特許出願の費用と弁理士に依頼する場合の費用の比較で説明しています。
早期審査が認められると、事情説明書を提出してから審査結果の最初の通知が発送されるまでの平均審査待ち期間は
なお、この平均審査待ち期間は、通常の早期審査よりもっと早いスーパー早期審査の待ち期間を含めた平均審査待ち期間であると特許庁に確認が取れたので、通常の早期審査の平均審査待ち期間は2.3か月ちょっとだけプラスになると思います。
スーパー早期審査については早期審査の申請を行うか否かの確認で説明しています。
このグラフからわかるように、早期審査の平均審査待ち期間は3か月以下を維持しています。
なお、早期審査の申請件数は増え続けていましたが、2020年は特許出願件数が大幅に減少し、その影響を受けてか早期審査の申出件数も少し減少しました(2019年22,912件→2020年22,401件)。2022年まで申出件数は少しずつ減少しています(2022年20,578件)。
中小企業などに早期審査の申請要件を緩和したのは2006年からですが、それでも早期審査対象出願の特許査定率は上昇傾向にありました。特許査定率というのは特許が認められる成功率のことをいいます。
古い2013年のデータですが、早期審査の対象となった特許申請の特許査定率は81.0%で、全特許申請の特許査定率の69.8%と比べて、11.2%も高い特許査定率でした。
中小企業は積極的に早期審査制度を利用するべきであると思います。
早期審査を利用した場合のまとめです。
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