特許申請・出願により特許権を取得したことによる効果、メリット

特許申請・出願により特許権を取得したことによる効果、メリット

特許申請手続をして審査を経て特許権を取得すると、どのような効果、メリットがあるのでしょうか。

特許権などの知的所有権を取得することによって事業を進める上でどのような効果があったかなどについて中小企業に聞いたアンケート調査結果が、特許庁による「平成25年度中小企業等知財支援施策検討分析事業(中小企業の知的財産活動に関する基本調査)報告書」に掲載されています。この報告書に記載されたデータなどを参考にして特許権を取得したことによる効果について説明してみようと思います。

表1は、過去10年以内に収益に大きく貢献するような「新技術やヒット商品・サービス」が生まれた中小企業2,822社に、特許権などの知的財産権を取得したことが事業を進める上でどのような効果があったかを聞いたアンケート調査結果をあらわしています。
このアンケート調査は、予め用意された効果の項目にあてはまるかどうかについて複数回答可能で聞いた調査です。効果について「その他」とした回答が2.3%と少ないので、用意された効果の項目に大きな漏れはないと思います。また、効果の項目は、それぞれ明確に区別することができるというわけではなく、関連があったり、重なる部分もあるように思います。

正確には特許権のみではなく、商標権、意匠権、実用新案権なども含んだ知的所有権を取得したことによる効果についてのアンケートなので、特許権取得に限った効果として考えてみる場合には、数字を細かく比較することなどはあまり意味がないかもしれませんが、大まかな傾向を把握することはできると思いますし、報告書に掲載された他の近い資料と照らし合わせてみたところ、傾向に大きな違いはないようです。

表2は、表1の「新技術やヒット商品・サービス」が生まれた中小企業(回答したのは2,338社)に、結果として業績向上につながったかどうかを聞いたアンケート調査結果をあらわした表です。

1 新技術やヒット商品・サービスが生まれた中小企業に聞いた特許権などの知的財産権を取得したことによる効果(複数回答可,中小企業2,822社)
効果の項目 割合
信用力を得ることができた 44.7%
模倣品や類似品の排除が可能となった 38.7%
対外的なアピール効果が得られた 38.4%
新技術やヒット商品・サービスのブランドを高めることにつながった 32.8%
新規顧客の開拓につながった 31.3%
価格付けに有利にはたらいた 24.0%
他社との提携など事業の幅が広がった 16.7%
市場を独占することができた 16.7%
特に効果はない 9.5%
資金調達が容易になった 4.8%
その他 2.3%
2 新技術やヒット商品・サービスが生まれた中小企業に聞いた特許権などの知的財産権を取得したことによる業績への影響(単数回答,中小企業2,338社)
項目 割合
大いにつながった 27.2%
ややつながった 48.6%
どちらともいえない 21.1%
あまりつながらなかった 2.7%
全くつながらなかった 0.3%

表3は、表1,表2の「新技術やヒット商品・サービス」が生まれたという限定のない多くの中小企業に特許権などの知的財産権を取得する目的、効果を複数回答可能で聞いたアンケート調査結果を表しています。
また、あわせてそれぞれの項目の目的達成割合(目的として設定して達成した割合)も表しています。

3 中小企業に聞いた特許権などの知的財産権を取得する目的、効果、目的達成割合(複数回答可,中小企業5,035社(目的),4,924社(効果))
目的・効果の項目 目的設定
割合
効果
割合
目的達成
割合
模倣品や類似品の排除を可能にする 49.6% 36.2% 57.9%
信用力を得る 34.3% 28.9% 58.8%
市場を独占する 28.9% 11.6% 34.1%
新技術や商品・サービスのブランドを高める 26.5% 23.4% 55.3%
対外的なアピール効果を得る 24.1% 25.6% 64.9%
新規顧客の開拓につなげる 20.4% 18.7% 54.7%
価格付けに有利にはたらかせる 16.8% 10.7% 43.5%
他社との提携など事業の幅を広げる 7.9% 10.2% 61.1%
資金調達を容易にする 2.4% 5.6% 70.3%
その他 2.2% 2.2% 43.8%
特に目的(効果)はない 1.1% 10.5%

特許権を取得したことによる基本的な効果は、特許発明を広く事業として独占的に実施することができるようになって、「(競合企業などによる)模倣品や類似品の排除が可能」となり、事業を有利に進めていくことができる効果であると思います。

強い特許権を取得できれば、この効果にとどまらず「市場を独占する」までの効果を得ることができる場合があります。
逆に特許権は取得できたものの例えば自社の開発商品が権利範囲から外れてしまっていて弱い権利であると、「特に効果はない」ということになりかねません。

「市場を独占」するまでの効果を得るのは、アンケート調査結果で効果としてあまり実感されておらず目的達成割合が低いことからわかるように、小さな規模の市場でないと現実的にはなかなか難しいかもしれません。
市場を独占する効果に少しでも近い効果を得るためには、特許申請手続を行うにあたって発明の内容について十分に検討して、練り上げる必要があります。
自社が開発した技術、商品などが漏れなく特許権の権利範囲に含まれるようにするだけではなく、競合企業に権利範囲から外れる逃げ道を作らせないために自社の開発技術の周辺についてもなるべく埋めることができるように権利化を目指す必要があると思います。競合企業の出願動向、技術動向を調査すると、周辺技術を練り出す参考になります。場合によっては複数の特許権を取得する必要が生じるかもしれません。

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