特許庁による意匠審査基準の一部改訂案に対する意見募集について

特許庁による意匠審査基準の一部改訂案に対する意見募集について

特許庁では、部分意匠の図面提出要件の見直し及び画面デザインの登録要件の明確化に関する意匠審査基準の改訂案について意見募集を平成23年6月20日まで行っています。
「意匠審査基準の一部改訂案に対する意見募集」(特許庁)(リンク先消滅)

意匠法を改正しなくてもすむ範囲で、審査基準を改訂して、運用を早めに改善しようということで、改訂意匠審査基準の運用開始日を、最終版の公表(7月中予定)と同時に定めて速やかに適用を開始するとのことです。

部分意匠の図面提出要件の見直しは、出願人の負担軽減を図るために、部分意匠の意匠登録出願で、提出を省略しても意匠の特定に影響がない図の省略を可能とする改訂です。

例えば、意匠法2条2項に基づいてチューナー付磁気ディスクレコーダーと一体として用いられる表示機器に表示される操作用の画像を部分意匠として出願する場合には、磁気ディスクレコーダー本体の形態を表わした一組の図面は、願書の【意匠の説明】の欄に「意匠に係る物品全体の形態を表わす一組の図面は、意匠登録を受けようとする部分が表れないため、省略する。」と記載することで、省略できるようにするそうです。

また、意匠登録を受けようとする部分以外の部分(その他の部分)のみが表れる図のうち、「正面図又は背面図のいずれか一方」、「左右側面図のいずれか一方」、「平面図又は底面図のいずれか一方」は、【意匠の説明】に省略した図の説明をすることで、省略できるようにするそうです。
この場合、6面図中最低限必要な3図を提出すれば、手続補正指令は行われないとのことです。

画面デザインの登録要件の明確化は、具体的には、意匠法2条1項により保護される表示画像の保護要件の明確化と、変化する画像について、どのような要件を満たす場合に複数の画像を含んだ状態で一意匠と認定されるかについての明確化です。

意匠法2条1項により画像が保護されるためには、要件1「その物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であること」、要件2「その物品にあらかじめ記録された画像であること」の2つの要件を満たす必要があることが、審査基準に記載されることにより明確化されます。

要件1により、表示画像が2条1項の保護対象であって、2条2項で保護される操作画像は対象外となります。
また、例えば壁紙のような装飾表現のみを目的とした画像は、物品の機能を果たすために必要な表示とはいえないために、意匠を構成しないと判断されます。

要件2により、例えばインターネットの画面、ビジネスソフトなどをインストールすることで表示される画像は意匠を構成するものとは認められません。

意匠法2条1項により保護される表示画像の例としては、デジタルカメラの撮影時に水平状態を確認するための水準器表示が挙げられています。
また携帯電話機の方位計測表示機能のように、物品の本来の機能ではない機能を果たすために必要な表示画像であっても、願書の【意匠に係る物品の説明】でその機能を説明することにより保護されうるそうです。

変化する画像については、変化前の画像と変化後の画像が、①物品の同一機能のための画像であり、かつ、②変化の前後の画像に形態的関連性が認められる場合に、複数の画像を含んだ状態で一意匠と認定されるとのことです。

①物品の同一機能のための画像であるという要件について、認められない例として、メール機能のための画像から電卓機能のための画像に変化する例などが挙げられ、認められる例として、連続して変化する銀行のATMにおける振込機能のための画像が挙げられています。

②変化の前後の画像に形態的関連性があるという要件について、認められない例として、意匠登録を受けようとする部分について、変化前後の画像に共通する要素がなく、まとまりに欠け、形態的関連性が認められない、複写のための各種設定を行う画像が挙げられ、認められる例として、画像表示部内のレイアウト変更、図形等の漸次的な変化、共通モチーフの連続的使用、追加的な図形等の展開などの例が挙げられています。

実際に出願されて登録された事例を集めた画像登録事例集が逐次追加されて特許庁により公開されていくということなので、これにより審査基準が将来的にはもう少し明確になっていくと思われます。

2011年05月24日 |

カテゴリ: 知的財産関連


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